10:30に旅行社の前に来いといわれたので5分前に店にはいると、『あっ』といった感じでおばちゃんがあわててどこかに電話している。
うん？ちゃんと時間前に来たじゃん。
「その子についていって。早く！」
なんだよ、オレが来るのを忘れてたのかよ。
若い子が無表情に「Go」とひとことだけ言って護国路を博愛路方面にさっさと歩いていく。
こういう時に荷物を代わりに担いでくれるのがインド、全くさわろうともしないのが中国。
ホテルの服務員もそうだった。
(もっともインドだと必ず『バクシーシ』を要求されるが)
バスは博愛路からさらに1本山側の(さんずいに真)蔵公路に停車していた。
待っていたおっさんに領収書と引き替えに乗車券をもらって乗り込むやいなや出発。
まるで待っていたようだが、オレは遅れていないぞ。いちおう言っておくけど。
古城を出たばかりのあたりは舗装が悪くがたがた道だったが、下関に近づくと路面がよくなった。
下関は古城と違いデパートや商店が建ち並ぶ立派な近代都市。
成都のように車道と自転車道が緑地帯で区切られていて、タクシーもバスもたくさん走っている。
そんな下関のバスターミナルに11:00に到着。
すぐに出発するのかと思いきや30分停車し、再出発は11:30だとだれかが英語で通訳している。
30分もバスの中にいてもしょうがないのでいったんターミナルビルにはいる。
ここでは各地へのバスのチケットを扱っているようで目的地別に距離、時間、バスの種類、そしてその価格がボードに表示されており下関-昆明間の高速バスの料金は103.5RMB。
これなら古城から105RMBはお得。
中国でも旅行社を通した方が安くなる場合もあるようだ。
ここからはほぼ満席になって11:30に再出発。
車掌は白族の民族衣装の女性。
観光バスではないのだからそこまでしなくても良さそうだが、この衣装はコスプレみたいでやはり人気があるのだろうか。
大理I.Cから楚大高速にのる。
高速の割にカーブの多いこの道路は開通して間もないらしく、SAはまだ未舗装の単なる駐車場だった。
通行量は韓国の仁川空港への高速よりもさらに少ない。
両側に広がる、野球場の芝生のような田圃がきれいだ。
ミネラルウォータと乗車記念のアドレス帳を配り終わったあと、VCDによる映画(ジャッキーチェンもの)のサービス。
タイもそうだが中国もこういうバスはなかなかサービスがいい。
パトカーが回転灯を点けて先に停まっていた。
バスもその後ろに停車。うん？スピード違反？
そのパトカーから平服の男女が降りてきてこちらに向かってくる。
ふむ、何かの検査か。
と思っていたらその二人は単なる乗客だったらしくそのまま席に着いてしまった。
ということは、あのパトカーはタクシー代わり？
高速上でバスを止めさせることのできるタクシーとは便利なものである。
パトカーのドライバーというか、警官が運ちゃんに手を振っていたところをみると知り合いなのかもしれない。
そういえばさっき運ちゃんの携帯に電話がかかってきてたっけ。
「もしもし、友達がこれから昆明に行きたいんだけど、バスに乗り遅れちゃってさ。お前、今運転してるよな。どこら辺走ってるんだい？」
「今、▲▲▲のあたりだよ」
「じゃ、これからパトカーで高速に乗って○○○あたりで回転灯点けて路肩に停まってるからそいつらを拾ってくれないかな」
「ああ、わかった。○○○あたりだな」
「どうもありがとう。じゃ、今度ビールでもおごるよ」
というような会話があったのかもしれない。
日本だったら運転中に携帯で話していること自体でも問題になるだろうけど。
楚雄西という料金所を過ぎるとここからは対面通行。
もう1時をとうに過ぎている。
そろそろ腹が減ってきた。
そのうち食事休憩があるとは思うが、いつもウエストバッグに忍ばせている非常食のおつまみを一袋口にする。
するとまもなくバスはSAのようなところに入っていった。
どうやら昼食&トイレ休憩のようだ。
高速のレストハウスに相当する錦秀風味園という食堂で総菜を適当に盛ってもらって10RMB。
お代わり自由ではないがインドのミールスのようなもの。
冷めてはいるがどれも味はいい。
25分の休憩の後、再出発。
けっこうあわただしいからご飯を食べるのが遅い人には厳しいかもしれない。
ここから昆明まではあと147km。だいたい半分ほど来たことになる。
龍山料金所をぬけると安寧市。ここから再び2車線路。昆明まで27kmの標識。
バスは頻繁にクラクションを鳴らし前の車を次々と抜いていく。
この分なら予定より早く到着するかもしれない。
でも、ここまでにも2回ほど事故があったから気を付けて運転してくれよ > 運ちゃん
大現料金所を過ぎて一般道にはいると渋滞。
さすがに地方都市といえども雲南省の省都。
上海ほどではないにしても車が多い。
昆明バスターミナルには予定より若干早い16:20に到着。
まずはホテル探し。
地図を見るとバスターミナルの周囲にはたくさんのホテルがあるようだ。
大した距離ではないので荷物を担いで茶苑賓館にいってみる。
ここは☆☆☆ホテル。これくらいなら英語が通じるかと思って聞いてみると
「No」
筆談で『今天 房有？』と書いてみると
「没有(メイヨー)」
一瞬、麗江での悪夢が脳裏をよぎるが、大都会なんだしどこかは空いているだろうと気を取り直して次を探す。
ここから近いのは、紅河賓館。これも☆☆☆クラス。
荷物を担いで汗をかきながら歩いていくとこれがなかなか立派なホテル。
さっきの茶苑賓館よりもよさそう。
夜総会があるのが気にかかるがお誘いの電話がうるさかったら電話線を引っこ抜いておけばいいだろう。
広々としたロビーの右手にあるレセプションに声をかける。
「英語はなせる？」
「NO」と最初の女性。
またも筆談『今天 房有？』
「有」
『一人房 多少銭』
『198RMB』
『VISA Card OK？』
ここで彼女が詰まった。これくらい解ってくれよな。
すると助っ人の女性が登場。彼女は英語が話せる。
筆談メモを見て「OK」
ああ、よかった。
また1泊分のデポジットをとられたらたまったもんじゃないからな。
レイトチェックアウトもオーバータイムチャージなしでOKをしてもらった。
それにしても日本人なら中国語が話せなくても筆談で何とかなるが、これだけ英語の通じない国で欧米人はいったいどうやって旅しているんだろう。
ロンプラの会話集で一生懸命話しているんだろうか。
ま、彼らにとっては日本も似たようなものか。
雲南名物といわれている『汽鍋鶏』を本場で食べたかった。
しかし昨日の洋風を気取った店では残念ながら『没有』だったので、今日はそこそこ高級な中華の店がいい。
今回中国に入ってからまだ一度もホテルにレストランが付いているところはなかったが、ちょうどこのホテルには中華レストランがある。
ここくらいの店ならきっと汽鍋鶏が有るに違いない。
ちょっと高いかもしれないけど食べそびれてあとで後悔はしたくないので行ってみよう。
このレストランは宴会がメインらしく、入り口に近い別室からはにぎやかな声が聞こえて来ているが、メインのホールは朝食のビュッフェの準備が傍らにあるだけでウエイトレスが暇そうにしている。
「○☆▲◇」
席に着くとメニューを差し出しながらウエイトレスが何か言った。
全然わからんがとりあえず「青島ピーチュウ有没有？」これだけは言える。
「有。青島ピーチュウ▲□※●▽？」
さっぱりわからん。
「青島ピーチュウ1ヶ」
「青島ピーチュウ▲□※●▽？」
いいから、もうゆるしてくれ。
そこでベテラン登場。レセプションと同じパターン。
「青島ピーチュウ、ワン？」
そうそう。
「それと、『汽鍋鶏』有没有？」
「有、有」
「あとこれね」と泡椒牛肉という料理を指さす。
突き出しはザーサイとピーナッツ。ザーサイもぴりっと辛い。
ビールを飲みながら待っていると、まず泡椒牛肉とやらが運ばれてきた。
青椒牛肉絲の材料をただ単に幅広に切っただけのような気もするが、こちらもピーマンがピリッと辛くてご飯が進む。
肉も軟らかいし味付けもしょっぱすぎずちょうどいい。
汽鍋鶏は直径10cmくらいの土瓶のようなものに入って出てきた。
以前、六本木で食べたときもこの大きさで、てっきり日本向きに小さくしているのかと思ったがそうじゃないらしい。
ちょっと油の浮いた澄んだスープの中に烏骨鶏の骨付き肉が入っている。
傾向は違うが土瓶蒸しのような微妙な味。油は全然しつこくなく程良い塩加減。
最後はまたしても雲南コーヒーで閉める。
毎単は全部で40RMB。こんなところでも600JPYというのは安い！
日本で同じものを食べたらきっと6,7倍はしただろう。
さあ、あしたはいよいよタイに帰国だ(！？)
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